ロケーションインテリジェンスの活用で、顧客とのコミュニケーションを深化!Tangerineインタビュー

 2019.03.18  デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社

DACのパートナー企業をインタビュー形式でご紹介しているシリーズ。第2回目は、DACとの業務提携を発表させていただいているTangerine株式会社(以下、Tangerine)。「ロケーションインテリジェンスプラットフォーム(LI)」をキーワードに、オフラインの行動データを集約・分析できるプラットフォーム「Tangerine nearME」を提供されているTangerineの山元様に、ロケーションデータやビーコンを取り巻くトレンドについて、お話を伺いました。

ロケーションインテリジェンスの活用で、顧客とのコミュニケーションを深化!Tangelineインタビュー
左:DAC 孫、右:Tangerine 山元様
 

まずは御社についてお伺いさせてください。

我々はもともと大手グローバル企業様のIoTサービス開発を手掛けており、こうした背景からBLE(Bluetooth Low Energy)(※1)近接無線テクノロジーの黎明期からANT+等デバイス同士の相互通信やクラウドやスマートフォンとのデータ連携によるコンシューマ向けサービスをグローバル向けに創っていました。また、BLE チップ供給企業としてはグローバルリーディングカンパニーであるNordic Semiconductorさんとは、様々な協業の取り組みを行っていました。そのような中、2013年6月のWWDCでのAppleのiBeacon発表をきっかけに、これまで培ったノウハウと新しいロケーションサービスを作ろう!とスピンアウトして、代表の平井と私、南野、米国在住の技術担当のVincentの4人チームでTangerineを設立しました。

(※1)近距離無線通信技術Bluetoothの拡張仕様の一つで、極低電力で通信が可能なもの。2010年7月に発表されたBluetooth 4.0規格の一部として策定された。

 

御社ではどのような事業を展開されているのでしょうか。

「ロケーションインテリジェンスプラットフォーム(LI)」をキーワードに、オフラインのユーザー行動データを集約・分析できる「Tangerine nearME」を利用いただき、お客様のビジネスをデジタルトランスフォーメーションしましょうというのを目指しています。具体的な事業内容としては、ビーコンやWi-Fiとスマートフォンを利用した店舗への集客や店頭でのデジタル販促、オフラインデータからユーザー属性を導き出すリータゲティング広告連携、インバウンド旅行者向けのロケーション連動型多言語コンテンツ・広告配信サービスなどを提供しています。


「店舗への集客や販促」の部分に関してお伺いしたいのですが、現在、こちらの観点で“ロケーションデータ“を取り巻くトレンドというのはどのような状況なんでしょうか?

日本・米国を含む世界の小売市場を見ると「ECの売上が大きくなっている」と言われていますが、米国では物販系消費の約90%、国内市場では約95%にあたる140兆円が依然としてリアルな店舗で発生しています。(※2)これまではEC化比率を上げることに躍起になっていた流通事業者も、相当な投資をしたところでアマゾンのようにはなかなかなれない。一方でリアル店舗は引き続き消費が拡大している点を改めて見直し、来店者に対してデジタルでいかに顧客関係を築き上げ売上を促進するか?という方向にトレンドが変わってきていると感じています。米国の大手流通事業者では、自社アプリを戦略的に位置づけ実践している例がここに来て改めて増えてきてます。(買いに行く)店自体をデジタルで進化させてきていて、「インストアモード」がトレンドになってるようです。

※2:参考URL(http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001-2.pdf)

 

「インストアモード」ですか?

店舗でのユーザーの行動が「購買型」から「体験型」にシフトしている、と言われています。店舗で(商品を)見ても、例えば24時間以内にオンラインで買って届くという手段があるのであれば、お店には見に行くだけの人って結構いるんですね。試着など、リアルで物自体を見に行く。お店の中では商品を受け取らずに、家に届けるようにして手ぶらで出て行っちゃう。そういうのを「インストアモード」と言って、お店でもオンラインのような体験をさせよう、というものです。米国では、このような取り組みは結構進んでいます。

皆さん、お店行ってもスマートフォンをいじっているんですよね。実際のアンケート結果でも、18歳~40歳の人の83%が「お店の中でスマートフォンを使って商品を検索している」と回答しています。来店した人が「店で見た」り「触った」りしたものを店内のカメラ+センサーでトラッキングしていて、家に帰ってから自分が店舗で手に取った商品をアプリ上で一覧で見られたりとかするんです。(家に帰ってからでも)簡単に商品を購入する事が出来るようになっている。アプリとユーザーの接点が以前にも増して強くなってきています。リテール大手さんも顧客との接点を生み維持するツールとしての「アプリ」に大きな投資をされています。

 

「インストアモード」は日本だと GU さんがテスト的に始めていますよね。

始めていますね。今、日本も「インストアモード」のような取り組みをしようと色々導入やテスト、PoCをやっています。一方米国では、AIやARはもうどこも導入していて、店舗側は来店客が触ったとか、お店でどう回遊したとか、お客様の行動を全て理解しているんですね。我々の事業が狙う140兆円のオフライン流通市場はまだまだ手付かずのエリアが多く、今後拡大する傾向にあると考えています。

 

今日本での「リアル」と「EC」のシェアを見ると、ECのほうが10%を超えていると聞いたのですが…

2017年での物販でのEC化率は8%強です。今まではお店で買う人とオンライン(EC)で買う人が分かれていたんですが、『お店行って(そこでは買わず)家帰ってからオンラインで買う人』と、『オンラインで見て店に行ったけれど、また家帰ってから改めてオンラインで買う人』もいるんです。スマホが浸透したことによって、ユーザーは買いたい時に買えるようになった。つまり購買パターンが複雑になってきています。こういった市場背景に対する施策として、リアル(オフライン)とオンラインをつなげる技術としてのビーコンに企業から注目が集まっています。弊社でも去年と比べると引き合いが全く違いますね。もう人手が足りないぐらいの状態で導入を進めています。

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ビーコン利用のニーズが高まっているんですね。ビーコンに関する市場環境としてはどういった状況なのでしょうか?

ビーコンで情報を配信するには、スマホのBluetoothをONにしておいてもらう必要があります。そもそもBluetoothのON/OFF率どうなの?という質問は(創業した)2014年ぐらいからずっと言われ続けてきました。当時はまだ数パーセント、非常に少ないユーザーしかONにしてませんでした。すごい少なかったですね。それがiPhone 7が登場して、イヤホンジャックが無くなってから飛躍的に加速していきました。日本人はiPhoneが好きなので笑。ちなみにLINEアプリでのBluetooth オン率 59.6%(2019年1月調査)だそうです。

 

かなりBluetoothへの接続率が高くなっていますね。

Bluetoothは常時接続している人が多いですね。最近では、iOSのバージョンを更新すると(Bluetoothが)ONになるような仕様になりました。また、もう一つビーコン市場が大きく前進した要因に、LINEさんがビーコンの取り組みを始めたのがあると思っています。

 

LINEビーコンですね。

はい。DACさんとの取り組みとしても、LINEに対応している「DialogOne®」と「Tangerine nearME」の連携を進めさせていただいています。ナショナルグローバルクライアントさんを中心に、積極的に LINE を使って(ビーコンを)実施されている企業さんが増えました。店舗でのデジタル化施策としてLINE ビーコンを取り込まれている形です。我々の独自調査なんですけれども、若いスマホユーザーに尋ねると、ほとんど方がLINE ビーコンの「Attentionバナー」をすでに知っていて。相当数のユーザーが、実際にLINEビーコンのUXを経験されていると感じています。国内での(ビーコンの)認知は、本当にLINEさんのおかげで飛躍的に上がったと思います。

 

御社が提供されているサービス「Tangerine nearME」はどのようなものなのでしょうか。

「Tangerine nearME」は、ビーコンやWiFi、GPSなどのセンシング技術を利用することで、生活者のオフライン行動データを取得・蓄積・分析するリアル行動データプラットフォームです。前述の通り、全国に実店舗を持つ大手流通企業やメーカー、公共交通機関などでの導入が進んでいまして、オフィス、店舗、駅や観光名所などにおける生活者の行動を可視化して分析を行い、企業のオムニチャネル化推進やマーケティング効果の改善などに役立てていただいています。

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また、弊社で提供しているビーコン端末は、1台でLINE ビーコンとiBeacon両方を同時に利用できるハイブリットビーコンとなっています。案件として取り組みが増えているLINEビーコンの活用だけでなく、iBeaconを併用することで、公式アプリも同時に活用した屋内回遊や動線といった行動データ解析とフィードバックで最適な情報配信を行うことが可能となります。

御社が提供されているサービス「Tangerine nearMETM」はどのようなものなのでしょうか。2

LINEビーコンは、あくまでLINEプラットフォームに対してメッセージを配信する装置ですので、LINEプラットフォーム上の行動以外の分析も含めて行いたい場合は、自社公式アプリとiBeaconの機能を活用することで施策の幅を広げることが可能になります。また、 ビーコンのなりすまし・ただ乗り防止等、企業での大規模なビーコン導入に必須のセキュリティ機能も提供しています。

 

御社のサービスをすでに導入されている企業や業種ではどのようなところが多いですか?

流通大手、商業施設、アパレルといった小売業のお客様に加え、食品・飲料、消費財メーカーさんなどが増えてきています。特にメーカーさん多いですね。また資本業務提携をしていただいた東急さんとは交通機関でのビーコン利用を進めてまして、すでにPoCとして“LINE ビーコン”での取り組みを実施しています。電車の中ってみなさんスマホいじっている方が多いですよね。それこそLINEを開いていたりとか。その絶妙なタイミングを狙って様々なメッセージをユーザーに届ける施策を行っています。交通広告の底上げにつながれば、という取り組みとして実施させて頂いています。

ビーコン導入は商業施設、大手小売店舗さんとの取り組みが拡大しています。中でもアパレルさんとの取り組みは非常に多いです。いろいろな取り組みのなかでも、オフラインとオンラインをつなげる施策を構築しています。
例えば、昨晩とあるアパレルブランドのECサイトを見ていてTシャツをカートに入れたけども買わずに寝てしまった。こういうことってよくあると思います。翌朝渋谷に行った際、昨日見たTシャツのブランド店舗の近くを通ったら、(ビーコンをトリガーにして)買わなかったTシャツの在庫が(この店舗に)あることをアプリが通知してくれて、実物を見て買ってしまった。このようなオンラインとオフライン間のサービスは、すでにコミュニケーション施策として実施しています。

Tangerine‗Service2

この取り組みは、「Tangerine nearME」とSalesforceのマーケティングクラウドなどお客様のCRMシステムやECサイトとの連携で実現しています。対外的にはクライアント様マターで発表していないケースが多いんですが、実はソリューションとして「Tangerine nearME」を導入いただいている企業は日々拡大しています。

 

今後の展開について教えてください。

今後のロードマップとしては、ひとつは外部サービス/システムとの連携の強化があります。前出のDialogOne®を始め御社との連携も強化させていただき、クライアントベースでいろいろと実施させていただければと考えています。また、AudienceOne®との連携も進めていければと思っています。Web上で広告を配信した人がどのくらい来店したのかという来店計測や棚前行動、また(店舗に)来店してくれた人に対してまた広告を当てる。といった取り組みもできるようにしていければと考えています。

 

弊社に対しては、「リアルリターゲティング」に関する問い合わせが本当に多く上がってきています。

まだまだ検討段階のものもありますが、クライアントベースで機能やサービスラインナップの強化はどんどん実施していければと思っています。オフライン行動に基づくユーザー属性分析やりターゲティングなども提供できるようにしていきたいですね。
またビーコンのセキュリティの強化に関しても、これはかなり重要と位置づけています。セキュリティ強化をしたビーコンのリリースは、5月頃を予定しています。

 

ビーコンセキュリティはどうして必要なのですか?

例えば、来店ポイントを発行するのにビーコンを使うケースがあります。ポイントは換金性がある場合がほとんどですので、お店としては本当に来店してくれたユーザーにだけに発行したい。ところがビーコンは通常1つの端末から 同じ IDを 出し続けるシンプルな仕様で、さらにBluetoothというオープンな仕様を使っていることもあって、このIDは誰でも簡単にスキャンできてしまいます。スキャンしたIDを持って帰って、自分の家にあるビーコンに書き込んでしまえば偽ビーコンは簡単に作れてしまいます。偽ビーコンを使えば実際に来店しなくても来店ポイントが取れちゃうんですよ。

こういった不正利用を防ぐために、Tangerineでは独自のセキュリティ技術によりIDを不正に利用されることを防いでいます。弊社がお話させていただいている企業さんにとってこういったセキュリティ面は非常に重要で、その点からも弊社サービス導入を決断いただいているところが多いんです。

また、新しいビーコン端末の開発にも取り組んでいます。ビーコンでやりたいことは企業や担当者によってさまざまで、来店計測、棚前やレジ前計測、動線分析、目的によって置きたい場所が異なってきます。それぞれの場所に対して最適な端末のバリエーションの提供ができるよう、現在準備を進めています。基本は電池式ですが、通常ビーコン製品ですと1年も電池がもたないところを、TangelinenearME新ビーコンは iBeaconとLINEビーコンを同時に発信して4年は持たせる設計になっています。さらに電源が取れる場所(コンセントがある、POS端末のUSBがある、等)ではUSBビーコンを用意します。いずれにしても、電池交換とかにかかる保守の手間とコストを徹底的に排除することを目指しています。

 

山元さん、ありがとうございました。
今回ご紹介したソリューションについてご興味を持っていただいた場合は、以下よりお問い合わせください。

※2020年3月更新※
LINEbeaconは2020年3月でサービスの新規販売を終了しております。
あらかじめご了承ください。

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(聞き手:孫、飯高/編集:飯高)

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