Adobe Analytics と GA4 の違い(前編)

 2023.01.26  デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社

無償版の提供により多くの Web サイトに導入されてきたGoogle アナリティクス下、GAの標準プロパティ ユニバーサル アナリティクス以下、UA2023 7 1 を持って新規のデータ処理が停止し、将来的にサポートが終了する旨アナウンスが行われています有償版は延長リクエストも可能ですが、いずれにしても何らかの対応が必要な差し迫った状況となり、戸惑われている方も多いかと思います。

同じ Google 社提供である、Google アナリティクス 4 (以下、GA4も選択肢のひとつですが、他社サービスなどとの比較した上で利用の判断を行っていますでしょう

本記事では、UA からの移行についてお悩みの方、アクセス解析ツールの新規導入を検討されている方々より適切な選択を行っていただくための一助となるよう、アドビ社提供の「Adobe Analytics(以下、AA)」 GA4 の違いについて、前編・後編に分けご紹介します。「前編」である本記事では、GA4 移行おける課題の振り返りと、AA というツールのご紹介を中心に触れ、AA GA4 の機能について項目別に特徴を解説していきます。

DAC では AAGA 両方の企業資格を持っていますので、多数のサポート実績をもとに平等な立場から比較を行っていければと思います。

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UA 終了後の GA4 移行について

現在 UA を使用して Web サイトのデータ収集を行っている場合、2023 年 7 月 1 日以降も計測を継続するためには、別ツールへの移行が必要になります。

選択肢としては「Google 社提供の GA4 への移行」、「Google 社以外が提供しているツールへの移行」の2つが代表的なものとして考えられます。また、一口に「移行」といっても実際に何をすればいいかが想像しづらく、「後継ツールである GA4 なら簡単に乗り換えられるのでは?」と思ってしまいがちですが、注意しなければならないポイントがあります。特に重要な点を以下にまとめます。

◆GA4 へ移行する際の懸念点

  •  UA から GA4 へのデータ移行、設定の引き継ぎは不可。
  •  既に UA を利用しているサイトでも、GA4 を利用するには既存のタグに改修が必要(一部手法では流用可能な場合あり)。
  •  計測の仕組みがこれまでの GA とは全く異なるため、基本的な指標の数値が異なり、目標設定やイベントを使っている場合は、その計測方法も再設計が必要。
  •  基本指標の見方、レポート画面のデザインなどが異なるため、UA を使いこなしているユーザーであっても学習コストがかかる可能性が高い。


懸念点に挙げた内容を総合すると、既存設定を大幅に流用できる後継ツールというよりも、共通する部分はありつつ新しいツールに生まれ変わっていると言って差し支えないかと思います。
「同じ Google 製品だから」という理由だけで乗り換えると、思わぬギャップに苦しむことが予想されます。しっかりと GA4 の特徴を理解した上で、全く別のツールとして向き合っていく必要性を念頭におき、移行について検討いただければと思います。

GA4 移行に関しては以下の記事にてより詳しく解説しています。

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AAAdobe Analytics)について

AA はアドビ社が提供する日本でも多数の導入事例を持つ高機能 Web 解析ツールです。アドビ社はデジタルマーケティングに関連する複数のツールを提供しており、中でもAA は自社デジタルメディアに訪問した顧客・見込客の行動を、正しく計測し、すばやく分析し、深く理解し、それぞれに最適な施策へつなげるための様々な機能を持っています。

AA-GA比較_前編_01

※アドビ社資料より抜粋
青枠部分が Adobe サービス郡における AA の領域で、あらゆる施策の基になるインサイトを得るデータ解析の基盤となるソリューションという位置づけです。

AA-GA比較_前編_02

基本的なWebサイトデータの分析はもちろん、収集段階からの細かなカスタマイズ、アプリ分析にも対応しています。また、収集後のデータに関しても高度なセグメンテーション機能や、手軽かつ高機能な分析機能(後述するAnalysis Workspace等)によって即時に柔軟なレポーティングを行うことが可能です。日本国内においても、Google社提供のGAとは異なったアプローチで多数の導入事例と実績を持っています。

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AA(Adobe Analytics)とGA4の項目別比較:①分析・レポート

AA、GA4どちらもWebサイトデータの基本分析に関しては必須の機能が揃っています。それを踏まえた上で、両者を見比べたときにどのような部分が異なっているのか、下記4つの切り口で特徴をご紹介していきたいと思います。

①    分析・レポート
②    連携機能
③    ITP対策
④    その他特徴

前編では「① 分析・レポート」について解説を行っていきます。

 

AAの特徴

◆多機能なAnalysis Workspace

「Analysis Workspace」は、画面上でのドラッグ&ドロップで簡単に分析プロジェクトを作成する機能です。直感的な操作で指標やディメンションを掛け合わせたレポートを作成したり、多彩な表・グラフなどを自由にレイアウトしたダッシュボードを定期的に自動配信したり、といったことも可能です。
レポートフォーマットも「フォールアウト」、「フロー」、「コホート」など種類が充実しているため、使いこなせれば非常に自由度の高い分析を行えます。

また、プロジェクトを作成する際には、Adobe社が用途別にディメンションや指標を組み合わせて提供している「標準テンプレート」を利用したり、自分で作成したプロジェクトを「カスタムテンプレート」に変換して再利用したりといったこともできます。

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◆柔軟な変数、カスタム指標、セグメント作成が可能

AAでは、GA4のカスタムディメンション(イベントスコープ+ユーザースコープ)に相当する変数を最大275個(GA4では無償版75個、有償版225個)、カスタム指標は最大1000個(GA4では無償版50 個、有償版125個)使用することができます。

また、セグメントに関して、GA4では作成できるセグメント個数の上限がありますが、AAの場合は無制限に作成できるといった違いがあります。
機能面でも、「周期日付に基づく日付範囲」のようなセグメント条件の指定ができます。

周期日付セグメントは、「日付範囲ビルダー」の「周期日付」設定を利用して作成したセグメントです。周期日付を利用すると以下のようなセグメントの設計が可能です。

  • 定期開催キャンペーンの分析用セグメント
  • 訪問期間別ユーザーセグメント(休眠ユーザー、ロイヤリティユーザー、アクティブユーザー)


例えば、「60日前から8日前」の周期日付を指定したセグメントと、「最新の7日間」のセグメント、さらに順次セグメント(「その後」のようなシーケンスの指定)の機能を組みあわせることで、「直近60日間アクセスがなかったが、最近7日間に再訪した」といったユーザーアクションを表現することができます。

AA-GA比較_前編_03

現状ではAAの方がより複雑な条件に対応できるため、GA4よりもセグメント設定の自由度が高いと言えるかと思います。


◆サンプリング化されないフルデータセットの利用が可能

AAのデータはサンプリング化されずに、実際のオンライン行動に基づいた全量データが常にレポートされます。
GA4ではページビュー数が多いサイトで分析を行おうとするとデータのサンプリングが発生することがあります。サンプリングが発生すると、大量のデータの中から一部のデータを抽出してその傾向をもとにレポートが生成されることになるため、正確ではない結果が示される可能性があります。


◆精緻なEC分析が可能

AAはサイト内導線毎の分析や、購入に至ったユーザーが実際に辿った動線を追跡することを得意としています。具体的には以下のようなことが可能です。

  • サイト内導線ごとのCV貢献を確認する
  • イベント発生と商品情報を紐づけて、サイト内の様々な特集ページ(例:新生活キャンペーン、メンズ商品 等)を複数経由した場合であっても、どの地点がきっかけで購入されたかを分析する
  • 広告だけでなく、ページやカテゴリ単位での貢献度分析(アトリビューション分析)を行い、
    どのようなコンテンツが購買に効いているかを詳細に確認する


こうした分析が可能な理由としては、

  • セッション中の何がコンバージョンに結びついたか等を確認可能な「コンバージョン変数(eVar)」、複数商品を同時に購入した場合でも商品ごとに正しく情報を紐づけられる「マーチャンダイジングeVar」と呼ばれる変数が用意されていること
  • ユーザーが訪問したページや、検索キーワード等のサイト内で計測しているカスタム項目に対して、成果(売上)を配分してクレジットすることが可能な貢献度分析用の指標「パーティシペーション指標」が用意されていること

といった、AA独自の特徴が挙げられます。
(※eVar=GA4のカスタムディメンションに相当するもの)


GA4の特徴

「標準レポート」と「データ探索」を使い分けて分析

GA4のレポート機能は、用途別に大きく2種類に分かれています。サイトの大まかな状況を把握できる「標準レポート」、ユーザーが自由にレポートを作成できる「データ探索」です。

「標準レポート」は「レポートのスナップショット」「リアルタイム」「ユーザー」「ライフサイクル」の4つのレポートコレクションがあらかじめ用意されており、その中に「集客」「ユーザー属性」などの分析に役立つ複数のレポートが内包されています。基本的なWebサイトの分析をするための情報が網羅されているので、操作方法や見るべき項目が定まれば、初心者でも比較的使いこなしやすい機能といえるかと思います。

「データ探索」はUAのカスタムレポートに近い機能で、様々なディメンションや指標を組み合わせてデフォルトでは用意されていないレポートを作成することができます。
しかし、計算指標(指標で四則演算を行うこと)が使用できなかったり、視覚化のためのグラフや図などのバリエーションが少なかったりと、深掘り分析を行うためのツールとしての使い勝手がまだあまり良くありません(2023年1月現在)。
高度な分析にはBigQuery、ビジュアリゼーションにはLooker Studio(旧Googleデータポータル)など、他のGoogleプロダクトと連携していくことが必要になると思われます。

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◆セグメント機能の利用には一部制限あり

GA4プロパティのセグメントは、「データ探索」ツールでのみ利用ができます。
また、いくつかの機能的な制限があり、以下の2つは特に注意が必要になる点かと思います。

  • データ探索ごとに作成できるセグメントは最大 10 個まで
  • 個々のデータ探索手法に一度に適用できるセグメントは最大 4 個まで

無制限にセグメントを作成・適用できるわけではないことを念頭に置き、管理していく必要があるのはやや不便な点と言えるかと思います。

◆データのサンプリングに関する注意点

「標準レポート」利用時にはサンプリングは発生しませんが、「データ探索」を使用する際、クエリで処理するイベント数やユーザー数が割り当て条件を超えた場合はデータのサンプリングが行われます。上限は、無償版か有償版かによって異なり、以下のように決まっています。

  • 無償版GA4:クエリごとに1000万件のイベント
  • 有償版GA4:クエリごとに10億件のイベント

有償版のGA4の場合は、非サンプリングデータのリクエストを行うことで、サンプリングされていない状態のデータを抽出することは可能です(無償版ではこの機能を利用することはできません)。

 

前編まとめ

いかがでしたか。前編では、GA4移行における課題の振り返りと、AAというツールのご紹介を中心に触れ、AAとGA4の機能について項目別に特徴を解説していきました。

後編では、引き続きAAとGA4の項目別比較を行っていきます。データに関する連携機能、注目が高まっているITP対策、その他特徴について解説をいたしますので、併せてお読みいただければと思います。

後編はこちら>>>>

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