【連載第二弾】TSI×D.Table|Googleプロダクトを活用した顧客体験向上事例~データ活用施策実施のインハウス化と機械学習の応用~

 2022.04.11  デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社

本連載では、多数の人気アパレルブランドを展開する株式会社TSIホールディングス(以下、「TSI」)のGoogleソリューションを活用した取り組みについて、実際にTSIのご担当者様の生の声を踏まえ、施策の段階に沿って全3回に渡りご紹介します。アパレル業界に留まらず、様々な業種の皆様にとって有益なエッセンスがたくさん詰まった事例となっております。

前回の記事では、施策の全体概要と機械学習のインハウス支援に関するインタビュー内容をお届けしました。

第二弾では、TSIのデジタル広告やデータ活用戦略を統括する竹山健司さんと、竹山さんが率いるチームメンバーの佐藤悠歩さん・大橋直樹さん・上石萌子さん・菊地美和さん、取り組みを一緒に進めている弊社DAC及びグループ会社D.Table株式会社(以下「D.Table」)の担当である服部和磨・小林昂平の7名による、機械学習の応用とインハウス化の定着、また、Google CloudとGoogle Marketing Platform(以下、GMP)を連動させた配信に関するインタビュー内容をお届けします。


※本文中の敬称略

2nd Iterationの取り組み概要

背景・課題

- 2ndでのチャレンジや検証したかった内容を教えてください
竹山:D.Tableさんと会話しながら課題や目的を整理していく中で、大きくは以下3点を考えていました。

・ 各メンバーのデータ活用育成(全員モデリング作成を経験)
100%理解まではいかなくとも、メンバー4人がLTVや購入回数を活用して、データを広告配信まで含めて活用できるように進めたいと考えていました。
・ 広告クリエイティブへの機械学習導入
以前Google社の事例でGoogle CloudとGMPのData-Driven Creative配信を掛け合わせた事例があったため、TSIなりの事例を作れないかと考えました。
・ トータルコーディネートの広告活用
店舗スタッフもそれぞれのトータルコーディネートを発信している中で、コーディネートを意識した取り組みが広告ではできていなかったため、チャレンジしたいと考えました。


- 2nd Iterationでは「教育やトレーニング」という点に注視したかと思いますが、その目的や背景、抱えていた課題など教えてください
竹山:短時間で分析、ターゲティング抽出・効果検証が出来るようにし、インハウスでの活用促進をしていきたいと考えていました。(会社統合によりチームが新たに編成され)学習・実行意欲の高いメンバーが揃っていましたが、組織が統合したばかりで他に対応することも多く、私自身が習得したスキルをレクチャーする時間を割けていませんでした。また、前回のプロジェクトの1st Iterationから1年経っていたこともあり、アップデートも兼ねてML活用を他メンバー含めて進めていく必要がありました。そこで、チーム全体でデータ活用・ML・SQLのスキルアップを行う方向性について、会社の承認も得て進めることになりました。


- トレーニングを受けた4名の皆さんは2ndの目的や背景を踏まえて、プロジェクトが始まる前はどのような心境でしたか?
菊地:私は実は1stの最後からプロジェクトに参加をしていたのですが、当時中身をあまりよくわかっていませんでした。この2ndのプロジェクトできちんと学ぶことできることについて、とてもポジティブ(な気持ち)でした。

上石:私はBigQuery自体も触ったことがなかったですし、どういう活用ができるかもわからない状態でした。そのため、どういうリスト活用ができるかなど、2ndのプロジェクトを通して検討を進められることになり嬉しかったです。

大橋:私自身はBigQueryの名前は知っていましたが、具体的にどういうことができるかについては、不明瞭でした。そのためモデル活用が進められることに楽しみや期待がありました。

佐藤:BigQueryやMLは全くわかりませんでしたので、始める前は不安がありましたし、初めて触れるもののため、正直難しいイメージを持っていました。ただ、1stを踏まえてこれまで成果が出ていたため、今後活用していけるなという感触はありましたね。


3つの課題に対する各取り組み概要

- 実際に2ndではどのような提案や施策検討をされたのでしょうか?


服部:2ndでは、TSI様と会話していく中で浮上した3つの課題に対して、Google CloudとGMPを掛け合わせてどういう解決策があるかをご提案させていただき、施策の実施に至りました。具体的には、課題1の「データ人材育成」と課題2の「顧客単価向上」に関しては、1stでも実施したML Boosterを実施し、丁寧にBigQueryにあるデータを紐解きながら、予測モデルを作り、そのオーディエンスを広告プラットフォームに連携していく流れを組みました。一方で、課題3の「コーディネイトの良さを伝える」点に関しては、GMPとクリエイティブの力でどういう表現ができるかをかなり悩みました。しかし、D.TableだけでなくDACやグループ会社のトーチライト、クリエイティブでは博報堂i-Studioやゴールデンエイジの力を合わせて、広告クリエイティブでコーディネイトを表現する手段を見出し、配信準備を進めていくことにしました。

 

課題1と2に対する解決策:MLBoosterで4名のトレーニングとモデル構築を実行

- 2ndの肝となるトレーニング内容やMLのモデル構築はどのように進行したのでしょうか?


小林:1st Iteration同様、D.Tableのサービスである『ML Booster』(※1)のプログラムに沿って、MLを体系的に理解していただき、ハンズオン形式でML活用のスキルを習得していただく形で進めました。MLモデル構築のトレーニング部分は、主に私がハンズオンを行いながら主導で進めましたが、トレーニングを受ける4名の皆様のスキル状況も考慮し、2ndでもBigQuery MLを活用しました。よりデータ設計や活用、SQLも含めて肌感覚で学べるようにするためです。かつ、しっかりと自分のスキルアップを感じてもらえるように各フェーズで伸びるスキルセットも考えながら進行しました。2ndではSQLを触ったことのないメンバーが4人増えたため、1stよりももっと分かりやすいコンサルティング方法を強く意識しました。

- 実際に作成するMLモデルはどのような見解から作成したのでしょうか?
小林:MLモデルを構築するためには「何を予測するか」を決定する必要があります。ナノ・ユニバースにおいてどういった課題があるのかをデータをもとに分析したところ、顧客の多くが1回のみの購入に留まっており、2回以上の複数回購入している顧客が少ないことが課題として上がりました。そのため、売上を増加させるために「2回以上購入」を目的変数として、MLモデルの構築を進めました。その他にも「LTV」や「初回購入」などを目的変数とした複数のMLモデルを作成し、MLモデルごとの精度の比較や、配信した結果の比較を行いました。

- 実際にML Boosterのトレーニングを受けてみて、TSI様の率直な感想や印象に残っていることや、ご自身に役立ったと感じたことはありましたか?
TSI_members
菊地:事前に竹山から習っていたこと以外にも色々な活用方法があることを知ることができました。初めは見たままをまずはやってみるという感じでしたが、徐々に自分で考えながら活用することができるようになりました。MLはモデリングだけでなく、利用するクエリについても知ることができたので良かったです!

上石:私はSQLも書いたことがなかったため書き方から学び、どうやってデータを活用していくかの流れ全体を学ぶことができて良かったです!とはいえ、どのデータをどのように組み合わせるとどういうデータができるかをまだ完璧には理解できていないので、今後は蓄積しているデータをどうやって活用できるかを自分で考えていけるようにしていきたいです。

佐藤:同じくゼロから学んで優しく(笑)教えてもらえました!コードレスのMAツールを使っていた時もありましたが、今回SQLに初めて触れてみて、HTMLに(感覚が)近く覚えればできると感じ、今後どうやってどのように活用できるかをイメージをすることができました。これまでGoogleでの機械学習を連携している代理店様側に運用してもらってはいたのですが、実際に自分の手を動かしてみて、こんなことができるんだっていうことがわかりましたし、自分がターゲットにしたいユーザーに対して、これまでにない新たなアプローチができるという点がよかったです。

大橋:小林さんがとてもわかりやすくレクチャーしてくれましたし、UIも想定していたより使いやすくわかりやすかったので、うまく進められたと思います。私は(始める前は)モデル精度の向上がもっと難解なのではと予想していたのですが、実際にやってみるとかなり使えそうなことがわかりました!

- 「施策3:ナノ・ユニバース EC連動でData-Driven Creative配信」について教えてください

服部:DDC配信では、GMPのツールをふんだんに利用します。クリエイティブ内の要素をダイナミックにするためのフィード情報はGoogle スプレッドシートとCreative Studioを活用し、クリエイティブ構成はGoogle Web Designerを利用しました。またそこからそれらのダイナミックな情報をCampaignManager 360を活用し3PASSのクリエイティブタグに変換し、最終的に広告プラットフォームとしてDisplay & Video 360に落とし込み配信しました。

今回特徴的な点は、DACのグループ会社であるトーチライトの「seil」(※2)というツールを利用した点です。seilはサイト内のクローリングを可能にするツールで、今回のナノ・ユニバースのECサイトにあるスタッフコーディネイトやランキング、商品詳細などの各ページの画像やテキスト情報をクローリングし全てフィード情報に落とし込みます。その情報はCreative Studio側に落とし込まれるため、ECサイトと連動したダイナミックな配信が可能になりました。また、クリエイティブ制作に関しても、DACで元々サービス化をしていた「Rich Creative Promotion Service」(※3)というサービスを活用し、博報堂i-Studioやゴールデンエイジの制作陣にはブランドイメージを壊さないけれど、コーディネイトと各商品をよく伝えることができる表現を追及してもらいました。

そういった各種のスペシャリストと自社で持つツールを合わせつつ、Googleプロダクトと連動させたアーキテクチャを組み、MLモデルで作成したオーディエンスもDV360に連携し、MLモデルとEC連動したDDC配信を叶える広告配信を行いました。

- 広告配信を含む施策実施~効果検証フェーズで、どのような効果がありましたか?
竹山:まず4人が作成したMLオーディエンスと、D.Tableさん側に尽力頂いたGMPを活用したDDC配信で行った広告クリエイティブでの広告配信結果は、売上目標比160%、ROASも他広告と比較し152%となり、2ndでも非常に良い結果となりました。

佐藤:今回インハウスを進める取り組みがあったことで、データ活用のやり方や考え方、MLモデル構築など多くの発見や活用できる点が見えたので、非常に良い取り組みでした。

上石:『ナノ・ユニバース』以外の担当の『MARGARET HOWELL』など他ブランドへも活かせば、反応も異なると思うのでチャレンジしていけると感じました。現に、MARGARET HOWELLでもML活用を横展開し、ROASがかなり好調に推移しています(2022年2月時点)。

服部:D.Table側としても大きな成果に繋がったと考えています。MLモデルでは、小林を中心にインハウス支援のコンサルティングを行いつつGoogle Cloud、強いてはBigQueryの強みを活かすことができました。一方で、DDC配信では、元々DACが強みとして持っているGA・Creative Studio・Google Web Designer・Campaign Manager 360・Display & Video 360のGMP領域の活用を推進することができました。また、クリエイティブ制作では博報堂i-Studioやゴールデンエイジを、サイトクローリングではトーチライトのseilも活用することができたため、グループ会社を含めてTSI様をバックアップできたことは、今後のD.TableやDACにとってもかなりポジティブな取組みになったと感じています。

-ECサイトの素材をクローリングしたData-Driven Creativeの広告クリエイティブの出来はいかがでしたか?
  

佐藤:心からよかったと思っています!今回はコーディネートページからデータを取得して、男・女・男女混合パターンを作成しました。その出来栄え自体もよかったですし、作成もスピーディに対応してもらえました。クローリングも『ナノ・ユニバース』として初の試みでしたが、トラブルなく実行できて安心しました。コーディネイトとしてもパターンが大量にある中で、季節性があるものをランキングから引っ張ってきてもらっていたのでよかったです。アパレル業界では、流行が随分前から決まっているのですが、一般のお客様は直近人気であるものを見ています。クリエイティブの閲覧数も非常に多かったので、お客様にとっても嬉しいクリエイティブだったのではないでしょうか。今後は、ABテストや、どういうクリエイティブが効果的かを検証していく価値があると思っています。

※1:『ML Booster』は、D.Tableが開発した、機械学習を体系的にハンズオンを交えてスキル習得できるプログラムです。プログラムの流れにつきましては、前回記事をご参考ください。

※2:『seil powered by Sherpa』は、複数プラットフォームのデータフィード管理・運用を支援するソリューションです。ソーシャルメディアだけではなく、Google や Criteo など主要なダイナミック広告に対応しています。

※3:『Rich Creative Promotion Service』は、広告体験を損なわず、データによる最適なクリエイティブ選定を行い、エンゲージメントの最大化を目指すサービスです。詳細は、関連記事をご確認ください。

 

実施を経て

- 組織課題/教育という観点で、2ndはどういった取り組みになりましたか?
竹山:チームのみんながSQLとMLを実際にD.Tableさんのレクチャーを受けながら、回し切ることができましたし、ターゲットごとにボリュームの問題で一部配信が悩んだ部分がありつつも、広告活用まで含めてできたことが良かった点です。目的としていた、個々人がSQL・MLを理解して、分析・ターゲティング抽出、広告配信を行い体得し、他サイトへ展開も行うという部分は達成できたのではないでしょうか。会社統合後、引継ぎが不完全な部分もあり時間を少し確保しにくかったのですが、ハンズオンでみんなに対応してもらう時間を作ることで一通り回すことが出来ました。今は私だけしかプロジェクトを二巡できていませんが、これから3回目以降のプロジェクトも行っていくことで、より理解が深まるのではないかと思っています。


- D.Table担当の提案・実行レベルは、期待値に対しどうでしたか
菊地:定期的にMeetでのモデリングトレーニングをしてもらえて助かりましたし、学びが多かったです。Slackでのやり取りの対応もスピーディで助かりました!

上石:右も左もわからない面がありましたが、わかりやすくナビゲートしてもらいました。(自身の)担当ブランドは、基準が厳しくチャネルを増やすことが難しい面もありますが、データ活用のモデリングであれば転用できるので希望が見えました!

佐藤:ゼロから習得の状況でしたが、丁寧に対応してもらい解決も早く、よい取り組みでした。ハンズオンで学んだことの動画も見直せる環境で、やりやすかったです。

- 2ndはどういった知見を自社に残すことができましたか?解決できたこと/新たに浮かび上がった課題や今後やっていきたいことがあれば教えてください
竹山:広告の効率改善におけるデータ分析、ターゲティング抽出、広告配信という流れと効果検証までをインハウスでスピーディーに実施できるようになりました。
広告以外チャネルでのBigQuer及びMLの活用を促進していきたいと考えています。

菊地:上石も既に他ブランドに展開していますが、私も『MIX.tokyo』での活用を進めています。開始したばかりなので効果はこれから見ていく予定です。他ブランドへも活かすという点もスムーズにできる環境ではあると思っているので、頑張っていきたいです。

大橋:今回の活用したデータに加えて、他にも店舗データなど異なる角度でのデータを活用していきたいですね。

佐藤:OMOを会社として推進している点があるので、その点での配信を強化できていけるといいと思っています。店舗とECのシームレスな連携Facebookでのオフライン売上など、他にも活かしていきたいと考えています。

上石:今回の取り組みを通して自分の担当ブランドでの施策の武器が増えました!どんどん他ブランドへの展開を拡げていきたいと思っています。


※3rd Iterationの取り組みについては、次回記事でご紹介します。
※インタビュー・撮影は、感染症対策を施した上で行いました。

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