【後編】プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと―対談:ATARA 有園氏×DAC CMO 徳久

 2015.05.01  adtech管理者

アドテクを中心として広告業界のトレンドについて発信をする『DAC AD TECH BLOG(アドテクブログ)』。今回はアタラ合同会社が運営するメディア「Unyoo.jp」にて掲載いただきました、アタラ 取締役COOの有園雄一氏が弊社 取締役 常務執行役員 CMOの徳久昭彦に行ったインタビューの要約版【後編】をお届け致します。後編は、ホリスティックアプローチや媒体価値を上げるための取り組みについてのお話です。

前編はコチラ(リンク)

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動画一般化と、まだまだ発展途上の「動画広告」市場

有園:いわゆる静止画のバナーだけでなくて動画も売れてきているというお話がありましたが、その背景にあるのは、さっきおっしゃったコンバージョン目的ではなくてブランディングをしたい広告主が増えてきているからということでしょうか。

徳久:そうですね。もっと好意度を上げるとか、そういった目的に近いですね。

有園:この辺の話は、すごく大事だなと思っています。スマートフォン利用者が増え、電車に乗っているとき、女子高生が動画を見ているシーンを目にするのは 普通になりました。先日、喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、隣に座っている50歳くらいの男性のサラリーマンがスマホでずーっと動画を見ているんです。 「なにを見ているのかな」ってちょっとのぞいてみたら、ゴルフレッスンの動画を見ていました。徳久さんのようにこの業界をよく知っている方ではなく、インターネットやウェブサービスに対して特に高い知見を持たない一般的な方でも、喫茶店でごく自然に動画を見る時代になったんだなと。

徳久:なりましたよね。

有園:それがゴルフレッスンというのが、またなんか。

徳久:分かりやすい。

有園:そう!分かりやすいですよね。ただ、スマホの普及なんかの影響もあって、だれもが動画コンテンツを楽しむようになってきている一方で、日本の動画広告市場って、まだまだ発展途上じゃないですか。これはこれまでインターネット広告が主にコンバージョン獲得のための手段として使われてきて、ブランディングのツールとして考えられてこなかったことに原因があるのではないかと思うんです。

徳久:そうですね。それは大きいと思います。ただ、広告主がブランドを築くにあたって、インターネット広告を重視し始めていることは間違いありません。ブランドセーフティを強く意識しているナショナルクライアントは、信頼できる媒体で主に動画などのリッチなコンテンツを通じて、ユーザーエクスペリエンスを阻害することなくユーザーとのコミュニケーションを取りたいと考えています。また、まとまった量のインストリーム広告が流せる媒体はYouTubeがダントツですが、ひとつのペイドメディア※3 やフォーマットだけではブランディングは難しいので、他のメディアやオウンド(メディア)も含めて、様々な動画フォーマットを活用してくことになるでしょう。
※3:トリプルメディアの一つで、企業が費用を払って広告を掲載する従来型のメディアのこと。

「ブランディング」目的でのネット広告活用

有園:ブランディングでのお金が媒体社の方に流れていくことになるので、そこがより儲かる要素なのかなとは思っています。今回のAGやUFRといった領域で、ブランディングのお金が入ってきて動画広告がとれ、ブランドセーフティでブランドが喜ぶ、媒体社が儲かるというサイクルができると、別にテレビとかを敵対視しているつもりは全くないですが、テレビとかに使われているブランディングのお金が、ネット広告市場に流れてくるのではないかなと思います。

徳久:そうですね。

有園:そういう風に、徳久さんたちも、きっと思ってやっているんだろうなと。

徳久:もちろん、意識してやっていますよ。

有園:そうすると、テレビ局とかも、2015年から見逃し視聴で放送番組コンテンツをインターネットに無料で流すみたいない話が出ていますし※4 、ゆくゆく、これはテレビのブランディングなのかネットのブランディングなのかは関係なく、広告主側にとっても、テレビ局とか新聞社とかにとっても、紙はもう未来永劫続くか分からない状況になっているので、こういう市場をきちんと育てていくことが大事なのかなと思っています。
※4:一般社団法人 日本民間放送連盟 井上会長 定例記者会見(2014年9月開催)

徳久:そのとおりです。

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有園:結局、プライベートエクスチェンジがなぜ重要なのかというと、ブランディングに役立つネット広告というものを作っていくからだってことですよね。

徳久:広告主の視点で言うと、そういうことですよね。どちらかというと、ネット広告は安いものを上手く買えたほうがいいという風潮で成長してきました。「ROIが良ければ最高だぜ」みたいな感じできたけれど、当然、それだけではないことは、かなり明らかになってきています。AGやUFRというのは買い方の話で、広告の手法の話ではありません。だけど、広告主の求めるブランドセーフティと媒体社のプレミアム性というのを担保しながら効率的なブランディングを実現するのは買い付けの仕方、課金の仕方、価格形態というのが当然、重要になってきます。それに応えられるのがプライベートエクスチェンジなんだと思います。

媒体社価値や収益向上のために、媒体社がすべきこと

有園:媒体社視点であらためて伺いますが、そういうプログラマティックなプレミアムな枠の取引ができるようになってきたとき、そのシステムを媒体社が導入するだけでは、なかなか儲からないということでしょうか。徳久さんは媒体社を啓発していく立場におられますが、媒体社は何をしていけばよいのでしょうか。

徳久:そうですね。儲かる仕組みを作るためには、やはり自分の媒体にきているオーディエンスを、もっと正確にとらえることが大事だなって思います。

有園:となると、日経IDのような、媒体へやってくるオーディエンスを把握するCRM的なものとかを用意するということでしょうか。

徳久:日経グループさんは、自前のDMPみたいなものを持っていて、以前からそういった取り組みをしているので自社のオーディエンスをよく理解していますね。有料会員というところまで踏み込まれているからこそ、そこまでできるんだと思います。媒体社がなんとなくの思い込みで自社の媒体価値をとらえるのは意味がないと思います。当然、コンテンツによってもオーディエンスが違うし、視聴態度も違う。そこをきちんと把握した上で、その価値を正確にとらえていくことがまず第一歩かなと思います。

有園:媒体社によって、実は、広告枠の在庫管理がきちんとできていないという話があったりして。そこからではないかという話もあるかと思います。

徳久:そうですね。

有園:その手のことって、例えば、アドサーバを入れたら解決できるものなのでしょうか。僕は、広告を売る側にはいましたが、いわゆる媒体収益を上げる側の仕事をしたことがなくて。例えば、グーグルの(アドサーバ)DFPを入れれば、ある程度は解決するものなのでしょうか。

徳久:もちろん、DFPだけで解決するとは思っていません。確かに、GDN(Googleディスプレイネットワーク)で非常に効率よく、かなりの単価で売れるという現実もあるので、それも一つの手段だと思います。ただ、純広の概念でいったときにDFPだけでいいかというと、たぶんちょっと無理があるんですよ。

有園:たしか、その辺の話は「ホリスティックアプローチ」※5でしたっけ。
※5:媒体社にとって最も収益が上がる形で、広告枠を売買するようにするアプローチ。純広告が何よりも最優先ではなく、RTBによる買い付けでも、純広告のimpを保証しつつ広告表示が可能な場合は、買い付けも応じる。

ホリスティックアプローチ

徳久:はい。たくさん買ってくれるからといって単価を下げて売ると媒体は損してしまいます。予約の受け付け方によって、収益は大きく変わってくるんです。それって結構前からある概念で、例えば飛行機のフライトの値段なんかもすごく緻密に計算された価格を設定していて、ホリスティックアプローチができています。このタイミングならこの価格と全部計算されています。早い段階で安く売ってしまったら、後から高いものを入れられない。高く買って頂ける優良顧客を入れたほうが良いに決まっています。ですから、一部のプレミアム媒体では仮予約のような仕組を持っていますよね。このようにインテリジェントにやっていくことで単価も守られるし、全体収益も守られます。DFPは配信に重きを置いており、この辺はカバーできていないと思います。予約の取り方や売り方で単価もかなり大きく変わってくるのですが。

有園:なるほど。

徳久:また、マス媒体によくありがちなんですが、スポーツ面はこの営業さん、企業面はこの営業さんと担当が分かれているじゃないですか。売り方は営業さんに任せていて、その上司も詳細はよく分からないということがあったりして。2008年にマイクロソフトが買収した広告収益を管理する「Rapt(ラプト)」※6 というソリューションは、媒体営業担当の売り方を管理して収益向上を図るものでした。
※6:マイクロソフトが買収後、オンライン広告プラットフォーム「Atlas」の一機能として組み込まれている模様。
「Atlas」自体は2013年にFacebookが買収。
関連記事:マイクロソフトがRapt買収FacebookがAtlasを買収

有園:売り方を管理するというのは、営業Aが安く売ってしまった。その後に、営業Bは10%高く売れる案件があるとする。それを管理して、10%高いなら、後から入ってきた10%高い方を優先しようよってことでしょうか。

徳久:そうです。Raptは、そこまではやっていなかったと思いますが、営業マンの成績をグロスだけでは評価しないということです。グロスだけで評価すると単価がどんどん下がっていきます。それは、ネットのページビュー信仰みたいなのが、まだ影響しているんだと思います。「ページビューが無尽蔵に増えます」という前提でやっていくと、単価が下がっても、グロスが増えていくからOKじゃんみたいな話になってしまう。
でも、そうはいかない時代がついにやってきたので、売り方が結構大事になってきます。営業さんが実際どんな単価で売っているのかを管理することも大事ですが、それをアドサーバ側でホリスティックに管理することで、予約を受け付けるべきか否かというところからコントロールしていくのです。

有園:それは、御社のアドサーバであればできるのでしょうか。

徳久:はい、現在数社の媒体でトライアルの段階です。

有園:いわゆるアドサーバがあって、SSPがあってという形になるのでしょうか。

徳久:基本的にアドサーバ側でどの媒体にいくらで渡すかをコントロールします。また固定単価で販売するプライベートエクスチェンジにも対応する必要があるので、オープンオークション※7 しかできないSSPではダメですね。
※7:いわゆる従来のRTB取引のこと。

有園:そうすると、いわゆるプレミアムと言われる枠に対して、AGでくるのか、UFRでくるのか。

徳久:加えて純広告も含めて、予約の仕方、在庫の渡し方、それぞれきちんと管理できるといいよね、ということなので。単純にSSPに渡しましょうというのが最近ちょっと流行っていますが、それだけでは単価の下落を招いてしまいます。やはり、プレミアムな媒体価値を作っていくためには、全体的(ホリスティック)な視点で考えていかなければならないので、そこは僕らが強く意識して取り組んでいるところです。

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常にオーディエンスの価値を把握し、適正価格で販売することが重要

有園:いまおっしゃった『アドサーバでホリスティックに管理するということ』と、『媒体社側がDMPを導入して、あるいはCRM機能をもって、データドリブンをきちんと進めていくこと』は、どっちが大事なのでしょうか。

徳久:両方ですね。例えば、criteoさんのパフォーマンスや収益は高いですが、媒体社にとってはオーディエンスごとのCPCやCPMがいくらなのか全然わからないわけです。だから媒体社はそのオーディエンスの価値を把握して、根拠なく安く売り渡さないということが大事なことの一つですね。

有園:安く売り渡さないために、予約管理もするし。

徳久:常にオーディエンスの価値を把握することが大切です。そうすることで、適正な値付けをすることが可能になります。広告主にとって1万円の価値がある オーディエンスを100円とかで渡してしまうのは、おかしいのではないかなと僕は思いますけどね。適正な価格で販売しないと、(収益が確保できないため、)良いコンテンツが作れなくなり、結果コンテンツの価値低下を招いてしまいます。コンテンツの価値が低下すると(広告主にとって価値のあったオーディエンスが離れていき)、広告主は良いオーディエンスを見つけられなくなりますよね。

有園:アドサーバを導入してきちんと売り方を管理することと、DMPを導入してオーディエンスの価値をきちんと管理できるようになることが大切なのですね。

徳久:媒体社が「誰に」「いくらで」「いつ」売るべきなのかを、オーディエンスデータを活用して判断すべきです。予約の取り方に関しても、渡し方が正しいのか、シミュレーションに近いですが、そのシミュレーションを正しくやらないと勘だけで商売することになってしまう。コンテンツの価値に見合う適正な値付けを行っていくことが大事です。これまでのように枠だけで価値を守るのは無理があると思っています。枠にベースの価値はあるけれど、オーディエンスの価値を加えて、個々のインプレッション価格を決められるようになっていくでしょう。ですので、僕らが媒体社にDMPを導入するときは、深い分析に基づいたオーディエンスレポートをお出ししているんですよ。単なる配信レポートとは全然違います。

有園:それのレポートは、媒体社に出しているんですか。

徳久:広告主と媒体社の両方に出しています。そういうことをやっていかないと、「それなら純広でいいじゃん」ということになってしまう。これまでの媒体社レポートはインプレッションとクリックしかない。今はちゃんとデータでお互いに理解しあわないとダメな時代になってきたし、それに対して僕らが応えていくべきだと思っています。

有園:実は結構、DMP市場をつくっていく際には、御社みたいに媒体社と広告主の間を仲立ちするメディアレップという立ち位置の会社が、ある種、会員制倶楽部の元締めみたいなものですよね。特定の媒体社の特定のプレミアムな枠を持って、特定の広告主が取り引きしますという。そこを作っていく人たちが、実は一番大変なのかなって思っています。

徳久:それが生業ですから、やって当然ですね。ディスプレイ広告商品の販売は原則レベニューシェアでビジネスしているんで、単価が高いほうが取引効率は良いのです。安くて誰も得しないというか。もちろん、広告主にとって価値があわないものは買われないという話になります。ただ、その値付けの理由をロジカルに説明できるよう僕らは強く意識しています。

有園:きょうは、本当に勉強になりました。長い時間、ありがとうございました。

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本記事はアタラ合同会社運営の「Unyoo.JP」の記事、「DAC徳久昭彦氏に聞く!〜プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと〜」を要約・編集したものです。オリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらからどうぞ(リンク)

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