【前編】プライベートエクスチェンジの重要性、そして媒体社の収益向上に必要なこと―対談:ATARA 有園氏×DAC CMO 徳久

 2015.04.30  adtech管理者

アドテクを中心として広告業界のトレンドについて発信をする『DAC AD TECH BLOG(アドテクブログ)』。今回はアタラ合同会社が運営するメディア「Unyoo.jp」にて掲載いただきました、アタラ 取締役COOの有園雄一氏が弊社 取締役 常務執行役員 CMOの徳久昭彦に行ったインタビューの要約版【前編】をお届け致します。前編は「プライベートエクスチェンジ」とはどういうものなのか、が中心になっています。

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有園:今日は、日本のインターネット広告業界で15年以上にわたってアドテクノロジーを先頭に立って牽引し、アドテクノロジーにもっとも詳しい徳久昭彦さん(DAC取締役 常務執行役員CMO)をゲストにお招きすることにしました。インターネットの媒体社の収益モデルが最近、アドテクノロジーの影響で変わってきていると思っており、その辺のお話を伺います。

最初に、御社はメディアレップと呼ばれる存在で、基本的にはメディアの収益なしでは御社の売り上げも増えていかないという立ち位置でお仕事をされていると思います。そんな中、ここ最近、RTBみたいなものが出てきて、アドテクノロジーと呼ばれるものが広告主を中心にサービス提供されるようになってきました。歴史的にみるとアドテクノロジーは、たとえば、アドサーバなど媒体社向きのものがメインだったと思います。コインの裏表みたいなものなのでどっちもどっちだとは思うのですが、ここ5年ぐらいは広告主向けのアドテクノロジーが増えてきて、そろそろ、媒体社側が主体的にテコ入れをしなければならないのではないか?といった意識の芽生えが、2014年くらいからあるように思います。

僕の理解としては、徳久さんは、10年以上も前から日本のインターネット広告市場のテクノロジーを引っ張っておられます。御社は、いろいろなツールを持っていて、アドテク総合商社といっても過言ではない。日本一のアドテクソリューションベンダーです。

徳久:はい。そのように考えていただけると嬉しいです。

『プライベートエクスチェンジ』はすでに1年半取り組んでいる

有園: 2014年に電通さんがグーグルさんと組んで「プライベート・マーケットプレイス」と彼らは呼んでいますが、それを出してきました。2015年になり、Platform IDさんが同様のサービスをプログラマティック・ダイレクトと呼んで出してきました。これはいろいろな言葉がありますが、オートメーテッド・ギャランティード(Automated Guaranteed、以下AGと略)やアンリザーブド・フィクスド・レート(Unreserved Fixed Rate、以下UFRと略)みたいな領域の広告取引を始める流れが日本でも出てきています。(AGやUFRなどの詳細は)実は御社も同じ領域のサービスをプライベートエクスチェンジと呼称して、2014年くらいからやっていると思いますが。

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徳久:はい。実はDACでは2013年の10月頃には同様のサービスの提供を開始しています。当初はある特定の広告主のご要望にお応えする形でスタートしたので、新たな商品という意識はありませんでした。僕らはDSP「MarketOne®」、SSP「YIELDONE®」、DMP 「AudienceOne®」を持っているので、プライベートエクスチェンジを作る技術はすでに揃っていましたし。

ある広告主を担当する代理店から『ブランドの毀損を防ぐため、出稿先を信頼できるメディアに絞りつつ、データを活用して高い広告効果も得たい』というご相談を頂き、その広告主であれば媒体社は通常オープンオークションには出さないような良い枠を提供してくれるという確信があったので、交渉を始めたのがきっかけです。

有園: 2013年10月というと、1年半やっていらっしゃるということでしょうか。

徳久:そうですね。プレスリリースとして発表はしていません。DACはメディアレップなので、媒体社の収益を最大化するということに細心の注意を払っています。プライベートエクスチェンジはしっかりと運用すれば純広告と同様、もしくはそれ以上に収益を上げられるのですが、プレスリリースだけが先行して、媒体社の方々に誤解を与えるようなことはしたくありませんでした。広告主からのご要望に応じて、媒体社に個別にご説明してご理解頂くところからスタートし、徐々にここまで拡大してきたという感じですね。現在ではすでに500を超える案件の実績があります。僕らもある程度の自信をつけたので媒体社に積極的にアプローチを行うようになり、今では80社くらい入って頂いています。通常はいわゆるオープンオークションに在庫を出さない媒体社が、かなり含まれている状況です。


アプローチとしては、どちらかというと純広告の枠をいただく形に近いです。DACはメディアレップとして純広告を売っている立場でもあるので、その前提を踏まえて純広告とプライベートエクスチェンジの両方を組み合わせることでより収益の安定化も図れるというご説明をしています。媒体ごとにしっかりとご説明を行いながら参加社数を増やしてきました。

有園:プライベートエクスチェンジというのはつまり、純広の枠を固定価格でプログラマティックに取引する、ということでしょうか。

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徳久:冒頭で有園さんも触れられたように、プライベートエクスチェンジには二種類あって、予め設定された在庫と単価で取引する「AG」(図①)と、予め設定された単価でリアルタイムの取引を行う「UFR」(図②)というものがあります。先ほど申し上げた通り、DACのプライベートエクスチェンジは自社データを活用したい広告主の要望を受けて始めたものなので、「UFR」の形式からスタートしました。

在庫量は固定できませんが、価格を予め設定しておくことができるため、一般的なオープンオークションのRTBでは、CPM50円~100円程度になるところを、この形式では800円から1,000円といった価格帯で実施しています。純広の場合、CPM3,000円なんていう高額になるケースもありますが、それよりはかなり妥当な金額といえるのではないでしょうか。

「プライベートエクスチェンジ」は媒体社の収益向上に繋がっているのか

有園:媒体社はそれで儲かっているのですか。純広告と比較すると、どうでしょうか。

徳久:単価の面では儲かりますよね、当然。純広告の定価よりは安いものの実勢価格にはかなり近いです。純広告が定価で完売するケースは稀なので、併用することで、トータルでこれまでよりも儲かっているというケースはあると思います。いわゆる特定のオーディエンスが訪問したときだけ決まった価格で売る、さらに広告主が事前に分かっているとなれば、媒体社に値崩れやブランド毀損のリスクはほとんどありません。ただし、「その広告主が純広告で出稿している期間には実施しない」など媒体社によって一定のルールを設けています。

有園:「特定のオーディエンスが訪問してきたときだけ売る」というのは、会員制をしいていてユーザーの属性が把握できている、あるいはDMPを導入している媒体社でないとできないように思うのですが、その理解で正しいですか。

徳久:プライベートエクスチェンジは媒体社が持つ会員の属性情報を元に配信を行うケースと、広告主のオウンドメディアに来ている人に類似したオーディエンスに配信するいわゆる「オーディエンス拡張」というケースがあります。僕らのDMP「AudienceOne®」はオーディエンス拡張やセグメンテーションができ、あらかじめ実際にリーチ出来るボリュームなどを予測算出することが可能なので、それを推奨しています。DMPを導入していない媒体社は正確には分からないです。

有園:ということは、「AudienceOne®」などのDMPを広告主側が導入していて、特定のオーディエンスがたまたま、その媒体のインプレッションにあがってきたら、買い付けるということなんですね。それでも儲かるってことですよね。媒体社から見ても。

徳久:そうですね。DACグループのSSP「YIELD ONE®」経由の単価は数十パーセント上がってきています。SSP単価上昇の主な要因はプライベートエクスチェンジやDMPを利用した販売によるものなのですが、プライベートエクスチェンジを開始した直後から平均単価があがっており、現在ではリリース当初と比べると1.5倍近いかもしれません。DMPと接続したことで更に単価はあがっています。これは特定の媒体社のお話ではなく、YIELDONE®全体での現象です。

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有園:御社は純広告を手売りしてそのマージンを得ているわけですが、純広告を手売りするのと、AGあるいはUFRで売るのでは、御社としての利益率は変わらないのでしょうか。

徳久:基本的にはあまり変わりません。

有園:そうすると、御社としては、どっちが市場として大きくなってもいいかなって感じでしょうか。

徳久:そうですね。ただオープンオークション形式のようにパフォーマンスを上げれば単価も上がるということはありませんので、DSP側は利益をとりにくいというのはあります。ただ、純広も含めた全体のセルサイズで見たときは、いまのところ大きくは変わっていないと思います。

有園:この市場は、どのくらいの大きさになっているのでしょうか。全体は分からないと思いますが、差し支えなければ、御社の場合、純広告が100だとしてAGあるいはUFRは、どのくらいでしょうか。

徳久:現在はまだ数パーセントですが、広告主も増えてきていますしこれからもどんどん伸びていくだろうと考えています。ただ、媒体社のネットワークをやみくもに増やしてプレミアム性が希薄になってしまうのもよくないので、コントロールしながら拡大していきたいですね。広告主側もデータを熟知して使っている方が増えていて、単純に「コンバージョンがいっぱいとれればいいよ」という要望は減ってきていて、「もっと効率よくブランディングしたい」という広告主に導入して頂くケースが増えてきています。
なかなかリーチできていない人とか、自分たちが狙った人たちの態度変容を見たいなど、データを活用することで態度変容をおこしたいということで買っていただくことが多いですね。

有園:ほう。そこが重要ですよね。

徳久:ただ単純にリーチを獲得しい場合は「Yahoo!ブランドパネル(以下ブラパネと略)」※1 や「LINE」あたりがよく売れていますね。プライベートエクスチェンジはどちらかというと、(マーケティング)ファネルの真ん中のあたりの態度変容を促したいオーディエンスに照準を絞っています。

有園:態度変容ということは、ブラパネやったときよりも認知している人が多いとか、好意度が上がっているとか。

徳久:例えば「エンゲージ(メント)が高まっているよね」とかね。どっちかというと、滞在時間が長くなったとかそういうところに注目しています。ですから、ライトボックス(LightBox)※2 などのリッチなフォーマットを使っているケースが多いですね。

※1:Yahoo! JAPANおよびYahoo! BBのトップページに掲載が出来る出稿メニュー枠
※2:ライトボックス

後編に続きます。後編はコチラ。

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